2012年06月22日

ギリシャ神話的希望

今回の門CAFEのテーマは希望です。

まずは、ギリシャ神話から、希望を考えてみましょう。

ギリシャ神話では、

「パンドラの箱」に最後に残ったのが希望・・・

となっています。

知っている人も多いと思いますが、

ストーリーを簡単にまとめます。

むかし、ギリシャの神ゼウスの命令で、

人間を作ったのが、巨人プロメティウスです。

プロメティウスは、さまざまな知恵を人間に与えましたが、

ゼウスの言いつけで、「火を使うこと」だけは

教えることを禁じられていました。

しかし、寒さに震え、夜の恐怖におびえる人間を見て、

プロメティウスはゼウスの命令に反して、

「火の使い方」を教える決意をします。

そして弟のエピメティウスに言いました。

「私はゼウスの命令に逆らって人間に火の使い方を教える。

ゼウスはきっと私を滅ぼすだろう。

だから、これからはエピメティウス、お前が、人間を見守ってくれ。

さらに、ゼウスからの贈り物には、近づくな。

そして、この小箱だけは絶対開けるな。」

といって、小さな箱をエピメティウスに与え、

人間に「火の使い方」を教えます。

プロメティウスが言った通り、

ゼウスは怒り、プロメティウスを滅ぼします。

さらにゼウスは人間を堕落させるため、

職人の神ヘパイストスに命じて、

この世で一番美しい女性を作らせます。

それが、パンドラです。

パンドラは、美の女神アフロディーテからは「美」を

音楽の神アポロンからは「音楽」を

そして、ゼウスからは「好奇心」を授けられ、

エピメティウスのもとへ贈られました。

エピメティウスは、

兄のプロメティウスから禁じられていたにも関わらず、

ゼウスの贈り物であるパンドラの美しさに心奪われ、

パンドラを、自分の妻にしてしまったのです。

そのパンドラが見つけたのが開けることを禁止された小箱、

好奇心旺盛なパンドラは小箱を開けるようエピメティウスに頼みます。

美しいパンドラに懇願されたエピメティウスは、

ついに兄(プロメティウス)との約束を破り、

その小箱を開けてしまいます。

その箱の中からは「病気・盗み・ねたみ・憎しみ」など

あらゆる悪が人間の世界に飛び立っていきました。

そして最後に飛び出したのが、「希望」だった・・・という話です。


ギリシャ神話から学ぶ「希望」とは、

人間の世界がいかに悪で栄えようが、

最後には必ず「希望」があり、

人間は「希望」を頼りに生きながらえることができる

ということです。

世の中がすべて絶望的な世界だったとしても、

必ず、どこかに、なんらかの形で、「希望」が残されている・・・

というわけです。


私個人としては、この神話から他にも考えさせられるものがあります。

人間を堕落させるために贈られたのがパンドラなのですが、

そのパンドラに贈られたのが「美」「音楽」「好奇心」

というのも、興味があります。

「美」「音楽(芸術)」「好奇心」を、

人間を堕落させる要素として、神話時代の人々が考えていたことになります。

人間の「好奇心」によって生み出された科学技術が、

人間を滅ぼす兵器として使われた20世紀「戦争の世紀」を考えると、

はるか5000年も前の人々が、

この時代を予言していたかのように思えてなりません。


「美」「芸術」「好奇心」

これらが、人間を堕落させるものなのか、

逆に人間を向上させるものなのか、

考えてみたいテーマですね。


また、このパンドラの神話からわかることは、

さまざまな悪が箱に閉じ込められている時には、

「希望」も箱の中ですから、人間界には存在しなかったことになります。

悪がはびこる世界「絶望的な世界」と共存しているのが、

「希望」ということになります。

逆を言えば「絶望」のない所には「希望」も存在しないのかもしれません。



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Posted by ソクラテス at 09:32 │希望